アトリエ ハーフ・ムーン

トーベ・ヤンソン 「楽しいムーミン一家」

この絵のお話が気になって、本棚の奥を探して見つけました。小学生のころから大事にしてる本でした。トーベ・ヤンソンさんの「楽しいムーミン一家」。原名は、「まもののぼうし」です。

飛行おにが、「テーブルごと旅先のスナフキンに届けてほしい」というムーミンの願いをかなえる場面。でもそうすると、今、食べようとしていたごちそうが飛んでいってしまって、その後どうしたんだろう?と気になって読み直しました。誰も文句は言ってませんでした。ひとりずつ、願いをかなえてもらうことになっていたので、みんな食べ物より、そっちに集中していたみたい。

そして「おお、なにもかもたべつくし、のみつくして、なにもかもはなしあい、足がちぎれるほどダンスをして、それからよあけまえのひっそりした林の中を、家にねむりにかえっていくことは、なんて素晴らしい気もちだったでしょう」と続いていて、感動しました。こういうお話だったのか。。

翻訳した山室静さんが、小学生向けにあとがきを書いています。

第二次大戦の影響のことが書いてありました。

ヤンソンさんの処女作の「小さいトロールと大洪水」と、2作目の「ムーミン谷のほうき星」は、主人公たちが、洪水やほうき星からにげまどうお話だったのは、小国フィンランドがなめなければならなかった悲惨な体験のせいではないか、とスウェーデン児童文学史の見方が紹介してあります。その後で、書かれた「まもののぼうし」では、作者の気持ちが大きく変化している、とあります。

文中より

「飛行おにやモーランやニョロニョロの存在などが、ぶきみなかげを投げているのですが、全体はいかにもあたたかい目でながめられて、そういうぶきみな存在をも、またトフスランとビフスランや、じゃこうねずみのような、じぶんかってな存在をも、愛情とユーモアでつつみこむ、人生肯定的な見方が確立していると思います。

 フィンランドが戦後の苦しい時代をもりっぱにきりぬけて、経済的にもたちなおり、人々が自信を持って生きることができるようになったことの反映といえましょう。もちろん、ヤンソンさんも大きく成長したのです。」

ストーリーそのものというより、小さなきっかけ、思いつき、会話、が空気を作っていく。で、あとで、あれはどういうお話だったっけ?あの自由すぎる一言は、どうやって受け入れられていたんだっけ?と思います。で、ゆっくり読むと、気持ちいいのです。で、ゆっくり読むと、気持ちいいのです。何かが解決する面白さというより、それを見ているときの軽さや深さの味わいなんです。